ノルウェーの農場に住む四人きょうだいは、両親といっしょに村じゅうの牛をあずかって、山の牧場で夏をすごします。ゆたかな自然の中で遊び、はたらき、のびのびと生きる子どもたちの素朴な日常を、あたたかく描いた名作。
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岩波少年文庫が1950年に創刊された時発刊された5冊の中の一冊。その5冊はスティーブンス『宝島』、ディケンズ『クリスマス・キャロル』、ケストナー『二人のロッテ』、ウェブスター『あしながおじさん』、そしてこのハムズン『小さい牛追い』。
この本は読んだ記憶が全くないな。ノルウェーの牛追いの話なんて少年の私にはときめかせるものを持ってなかったにちがいない。今回初めて読んだ。子どもたちの生活がいきいきと描かれている。この作者は、1920年にノーベル文学賞を取ったノルウェーの作家、ハムズンの夫人。ハムズンは原始的な農耕生活を提唱し自らも実践した。だからこの話の「おかあさん」とは実際にこの牛追いの生活をしていたハムズン夫人だったのだし、子どもたちもハムズン家の子どもたちだったのだ。
ランゲリュード農場の子どもたちは、10才のオーラ、8才のエイナールの男の子とインゲリドとマルタは妹たちの四きょうだい。兄弟はなにかというと喧嘩をしたり、競い合ったりしながらも夏の間に大きく育っていく。夏の間の冒険も経験します。しかし、彼らはりっぱにうちの仕事の手伝いもするのです。森の中のあそびと山の仕事がていねいに描かれている。
家族は夏になると村じゅうの牛と山羊を預かって山小屋へと向かう。そこでひと夏を過ごす。山には大きなシラカバがあり、沼があり、新旧の牧場があり、子どもたちは山を駆け回って牛を追い、川にはまり、森で野宿したり、のびのびと育っていく。ハラハラする冒険もあるんだけど、おとなたちはじっと我慢づよく子どもたちを見守りる。ああ、私ならここで手を出すなあというところでも、じっと見守るだけ。こういうところがノルウェー人なんだろうなあ。
訳は石井桃子 翻訳で読みやすい。が、通貨が10円、100円というのは違和感があるなあ。未だEUに加入していないノルウェーでは通貨単位はクローネ。100分の1クローネはオーレ。クローネ、オーレでよかったんじゃないかな。
この本には春・夏の『小さい牛追い』に引き続いて、続編の秋・冬の『牛追いの冬』がある。谷の奥の大沼地で出会った少女との再会もあるらしい。続編もたのしみ。
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